「今、悩んでいるんです」
そんな会話から始まったある日のそんとく塾の授業日。
彼は、職親プロジェクトに参加した塾生。生まれ持った特徴を抱えもがき苦しみながら生きてきた人生。そんな中、重大事件を引き起こしてしまします。
あの日から、数年の月日が経ち、出所後、誰にも頼らず働きながら一日一日を罪と向き合い、生きてきました。
そんな中、彼に被害者の弁護士さんから手紙が届きました。内容は、被害弁済についての話し合いについてでした。彼は、そのことを素直に受け止め、少しづつでも弁済を続けていきたいと言いました。
そのなかで、被害者の関係者の方から手紙が入っていたそうです。そこに書かれていたのは、非難でも恨み言でもなく
「弁護士さんから、あなたがしっかりと働いていると聞きました。とても安心しました。これからも今のまま、しっかりと働いて生きてくださいね。」
そんな内容だったそうです。彼は、こんな言葉をかけてもらえるとは思っておらず、私に話すその眼には、光るものがありました。彼は、返事を書くべきかを悩んでいました。書くとして
「何を書けばいいのか」「何と書けばいいのか」
私は「思ったまま、ありのままを書くことが大切なんじゃない」とだけ伝えました。
自分の犯した罪は消えることはありません。被害者に与えた傷は一生癒えることはありません。
でも、一方で「すべてを償うことはできないが、少しでもわずかでも償っていきたい。でも、どうすれば・・・」
そんな出所者も少なくありません。
そんな、彼に
「まずはしっかり働いて、一日一日を大切にして、周りの人の役に立つことから始めようね」
彼が、本当の意味での償う行動を始める日も近いことを感じた、朝のひと時でした。